労務管理Q&A

News Letterより

「在宅勤務手当」は、割増賃金の基礎に含めなくても良い?
NewsLetter No.113/2020.9.1号より)
Q. 在宅勤務を本格的に取り入れることになったので「在宅勤務手当」を設けました。これは、残業等の割増賃金の基礎に含まなくても良いですか?

A. 割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくても良い賃金は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1ヵ月を越える期間ごとに支払われる賃金とされています。
 「作業用品代、出張旅費、交際費、作業費、制服、作業器具損料といった業務遂行に必要な設備・費用」は、本来使用者が負担すべきものであるか賃金には当たらないとされていますが、「在宅勤務手当」がどこまで正確に業務遂行のための実費相当額といえるかというと難しいです。
 不要となった通勤手当をそのまま在宅勤務手当としている場合や、一律いくらと決める場合などは、実費とは認められないため、割増賃金の基礎に全額算入ということになります。


感染症からの職場復帰について
NewsLetter No.111/2020.7.1号より)
Q. 感染症のため休んでいた従業員が職場復帰する際に、治っていることの「証明書」の提出を求めても良
 いのでしょうか?

A. 感染症法18条に規定する就業制限の解除に関する取扱い(令2・5・1事務連絡)では、自宅療養の開
 始から14日経過したことなどの要件を満たせば、職場等に証明書を提出する必要はないとしています。
 また、医療機関や保健所への各種証明書の請求は控えるようにとも記載されています。
  厚労省の新型コロナウイルス感染症関連の「企業の方向けQ&A」にもその旨の記載があります。
  これまでも厚労省では、インフルエンザからの復帰に関して、陰性を証明することが一般的に困難なた
 め、治癒証明書や陰性証明書の提出を求めることは望ましくありません、としていました。
  就業制限の解除は、医療保険関係者による健康状態の確認を経て行われるため、その方から他の従業員
 への感染を心配しなくても良いということになります。


『賃金の非常時払い』は、賞与も前払いの対象になるか?
NewsLetter No.108/2020.4.1号より)
Q. 従業員が病気で入院し、急な出費のため、毎月の給与だけでなく、再来月の賞与の前払いをしてもらえ
 ないかと相談がありました。前払いに応じなければならないでしょうか?

A. 従業員の出産や疾病などの非常時に思いがけない出費があり、従業員側から請求があった場合、給料支
 払い日前であっても、既往の労働に対する賃金(既に働いた分の給料)を支払わなければなりません(労
 基法25条)。
  ただ、支払いに応じなければならないのは、『既往の労働』に対する賃金だけです。賞与については、
 支払日に在籍していることを要件にしていたり、病気欠勤等で不就労期間が長い場合は減額したりするケ
 ースもあります。
  したがって、支払額等が確定していない賞与については、この対象にはなりません。


感染症と休業手当の関係は?
NewsLetter No.105/2020.2.1号より)
Q. 新型コロナウイルスのニュースが連日報道されています。
  感染症にかかった従業員を休ませると、会社の都合で休ませたということで、休業手当が必要でしょう
 か?

A. 新型コロナウイルスのように、感染症法に基づき、都道府県知事が就業制限等を行うことができるとさ
 れている感染症の場合は、給料は払わなくても良いということになります。
  次に、例えば、季節性インフルエンザのような場合、まず「発熱などの症状があるため労働者が自主的
 に休む場合は、通常の病欠と同様」となります。この場合、年次有給休暇などを取得することもありま
 す。
  一方、「医療機関の受診の結果では働ける従業員を、会社の判断で休ませる」場合や、「熱が37.5度以
 上あるなど一定の症状を理由に一律に従業員を休ませる」場合は、給料を支払う必要があります。
  つまり、医師の診断結果と関係なく、社内で感染が拡大するのを防ぎたいという理由で、一律に●日間
 強制的に休業を命じるときは、給料を払わなければならないということです。
※このQ&Aを掲載して以降、感染経路が不明な感染者が次々と確認されています。感染していても検査を受けていない方も多いかもしれません。
上記Q&Aは簡単な説明に過ぎません。新型コロナウイルスに関する労務管理上の取り扱いについては、下記の厚生労働省のサイトをご確認ください。日々情報が更新されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

「賃金前払い」を拒否できますか?
NewsLetter No.100/2019.9.1号より)
Q. 当社で雇用している外国人労働者から、「面倒をみていた故国の母親が死亡し、すぐに帰国しなければ
 ならないので、給料を前払いしてほしい」と申し出がありました。
  採用してから日が浅いことや、払ってしまうと日本に戻ってくるかどうか心配なので断りたいのです
 が、問題ないでしょうか?

A. 労働者の国籍に関わらず、「非常の場合」の費用に充てるため、請求があった場合は、「既に働いた分
 の賃金」について、給与支払日前であっても支払わなければなりません。
  これは、労働基準法第25条により定められています。
  そして、「非常の場合」とは、出産、疾病、災害などであり、労働者本人に限らず、その収入によって
 生計を維持していた家族の結婚や死亡も含みます。
  なお、この「非常時払い」に違反した場合には罰則(30万円以下の罰金)もあります。したがって、請
 求があれば、事業主は応じなければなりません。


従業員から通勤費用の全額を請求されました。
NewsLetter No.99/2019.8.1号より)
Q. 当社の就業規則では、通勤費用は月額2万円を限度として支給すると決めています。
  遠隔地から通勤している従業員から「足りない分の交通費を、自分の給料から出すのはおかしい。全額
 支給してほしい。」との申し出がありました。
  通勤手当で賄えない分を自己負担させるのは違法でしょうか?

A. 通勤にかかる費用を上限額2万円までを支給し、残りの金額を従業員が自己負担しても、何も問題あり
 ません。
  通勤費用、つまり通勤手当は、事業主が任意に支払うもので、従業員に対して必ず支払わなければなら
 ないと義務づけられているものではありません。


3歳以上の育児短時間勤務制度は女性限定にしても良いですか?
NewsLetter No.97/2019.6.1号より)
Q. 子どもが3歳までの従業員に認めている「短時間勤務制度」は、女性従業員が多く利用しています。従
 業員の希望が多いので、小学校入学までを対象にする場合、利用できるのは女性限定にしても問題ないで
 しょうか。

A. 3歳までの子を養育する従業員の短時間勤務制度を設けることは、育児介護休業法で義務付けられてい
 ます。
  また、小学校入学までの子を養育する従業員を対象にするのは、努力義務とされています。
  努力義務であるため、制度の内容(短縮する時間や対象者の範囲)は、独自に決めることができます
 が、男性であることを理由に、対象から外すことはできません。
  なお、業務の性質や実施体制により、短時間勤務制度を設けることが困難な業務※の場合は、労使協定
 により対象外にすることができますが、やはり、性別での区別はできません。
  ※(例)
  ・国際線の客室乗務員
  ・流れ作業の製造業務で、短時間勤務者を組み込めない業務 など


年次有給休暇取得義務化の「5日」に半日単位や時間単位で取得した分は含まれますか?
NewsLetter No.92/2019.1.1号より)
Q. 2019年4月から「年次有給休暇を5日取得させること」が義務付けられますが、半日の年休、それから
 時間単位で取った年休も、この「5日」に数えても良いのでしょうか?

A. 義務付けられた年次有給休暇の時季指定(取得させること)の「5日」には、会社が計画付与により休
 ませた分だけではく、従業員が自ら取得した日数も含みます。
  半日単位の有給休暇を認めている会社では、その半日単位の分もカウントしても差し支えありません。
 しかし、時間単位年休を労使協定に基づき導入している場合であっても、時間単位で取得した有給休暇
 を、義務化された「5日」にカウントすることはできません。